放送されている時から良い絵、良い言葉だなと心惹かれていた。
短い番組だ。だから録画する事もしなかった。
今ではそれを後悔している。
モタさんの“言葉”
昨年の12月に本になった。
例えば第1話はこんな風に始まる。
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「学生時代から
成績もパッとしない。
就職だって、なかなか
内定をとれず、今の会社に
拾ってもらったという感じです。
…
これといって才能もないし、
最近は体力にも自信がない。
性格に弱さがあるし…」とは、
ある患者さんの言葉である。
…
ここまで聞いて、私は思わず、
「あなたはすごいねぇ」と
いっていた。
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「努力してこそ凡人になれる」という題名が付けられている。
なかなか言えない言葉だ。
茂太さんのこの、驚き方が凄いと思うのだ。
他者のちょっとした「凄さ」に対して、素直に驚く事が出来る。
これはひとつの大きな才能だと思う。
物事に対して驚く心、
それを持つ事が自然科学を始めとする知的な作業には欠かせない。
それをレイチェル・カーソンはセンス・オブ・ワンダーと呼んだ。
それを茂太さんは持ち合わせていると思うのだ。
そしてじっくりとひとつひとつの“言葉”を聞かせ、
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平凡は非凡にまさる
という言葉もある。
平凡は地味ではあるが、
底に奥深い滋味が潜んでいる。
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という結論に進んでゆく。
人生の達人だ。
達観していて、それでいて全く上から目線にならない。
なかなか到達出来ない境地に茂太さんはいる。
そんな茂太さんの言葉ひとつひとつに
味のある、実に良い絵が付けられている。
松本春野さんという方の絵だ。
この本を手にするまで全く知らずにいたが、
良い作品を手がけている。
姓からピンと来なくてはいけなかった。
いわさきちひろさんのお孫さんらしい。
そう言われてみれば絵に同じ匂いがする。
血筋でも環境でも良いと思う。
ちゃんとあの絵の系統が続いていた事に嬉しさを感じた。
良い言葉に良い絵が添えられている。
逆でも良い。
良い絵に良い言葉が添えられている。
また良い本に出会えた。
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