押しも押されもせぬ大著だ。そして、文章は難解で、多くの注釈が細かに付けられている。
その注釈も律儀に追跡しながらこの本と格闘した。7ヶ月掛かった。
それだけに思い入れの深い一冊になった。
この本を読む前に、三嶋寛さんから、ハンナ・アーレントを読むなら外せない一冊として、『人間の条件』を奨められた。それとも格闘した。その読書体験が、この本を読む時生きた。
『人間の条件』では複数性という概念が強調されている。『全体主義の起原』では、「見捨てられていること」(英語版の「独りぼっちであること「ロウンリネス」)とされ、その概念の重要性が改めて理解出来た。全体主義は複数性を徹底的に破壊するものである事が論じられているのだと思う。
他にも『全体主義の起原』では、まだ未整理だった用語を、『人間の条件』を援用することによって、きちんとした形で理解することが出来、大いに助けられた。
逆に言えば、『人間の条件』を読んでいたときに曖昧だった用語が、『全体主義の起原』を読んで、ようやくはっきり見えてきた事も多かったように思う。
2巻の終わりから3巻に掛けてのアーレントの記述の迫力は満点で、肌が泡立つような思いで読んだ。その時の感覚は未だはっきりと思い出すことが出来る。
ハンナ・アーレントの名を、一躍世界に知らしめた1冊。ここから『精神の生活上・下』に至る、全ての作品を対象にしたい気分もある。
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