20200517

堀越孝一さん

7日間ブックカバーチャレンジ番外2

多分ホイジンガの『中世の秋』に始まるのだろう。
私にはヨーロッパ中世の歴史趣味がある。

折に触れて、出逢ったヨーロッパ中世に関する本は、数限りなくある。

その中から1冊を選ぶとすると『中世の秋』も訳した堀越孝一さんの『パリの住人の日記』という事になる。
15世紀フランスのパリに住んでいた一市民が残した日記を、丁寧に読み解き、翻訳し、注釈を付けた作品だ。

文献に対する態度が実に良い。

フランス語は少し囓ったが、発音、文法共にひどく難しい。増して中世のフランスの古語となると、手強すぎてとても手を出す気にもなれない。
堀越孝一さんはそれを自在に読み解き、解説する。

読みたいように読むのでは駄目だと堀越孝一さんは言う。
読解とは、書かれたものを書かれたままに受け取ることを言う。そこに読者の主観を交えてはならないという教えだろう。

この日記に取り組んだ、本国フランスの研究者の読み方をも批判している。
学問に対する姿勢はあくまでも厳しい。
しかし確実に愉しんでいる。
この『パリの住人の日記』を読むのが愉しくて仕方ないのだろう。それが翻訳を読む私たちにも伝わってくる。
私たちも思わず愉しくなる。

碩学とは、堀越孝一さんの様な方を指す言葉なのだろう。

碩学の作業に触れる事は、上質なワインを味わう様な快感がある。

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