実は3日前からSSさんとの会話で知っていた。
日本橋浜町にタンネというパンの店があった(もう過去形にしなければならない)。パンと言えばイギリスパンとフランスパンしか無かった時代、ドイツパンという豊穣な世界がある事を、私もこのタンネで知った口だ。
そのタンネが今日5日で店を閉める。
HPを見るとタンネは93年に誕生したらしい。
これには少しびっくりした。
93年と言えば、私が森下に住み、最もタンネを利用していたのは、その頃ではなかっただろうか?
私は知らずして、開店直後のタンネに通っていた事になる。
タンネでの買い物は楽しかった。
パンの種類が実に多かった。硬めのお菓子のようなプレッツェルから、堂々とした食事パン、ブールまで、ドイツパンはそのヴァリエーションが豊富で、とてもではないが、全製品を制覇する事は、叶わぬ願いだった。
今でこそ、ちょっとした地方都市に行けば、どこにもドイツパンの店はあるが、93年頃には、ドイツパンを入手するには、このタンネに行かねばならず、質実共に充実した、貴重な店だった。
その為タンネでは、93年には既に、注文販売で、全国にドイツパンを届けるシステムが完成していて、森下を離れても、暫くはタンネからパンを調達していた。
だが、その後私の東京時代の拠点であった池袋(ここは知る人ぞ知るパン屋の宝庫だ)にも、ドイツパンの店が出来始め、店先で、実際にパンを見ながら、迷いながら購入する楽しさには叶わず、いつしかタンネからのパンの購入は止んでしまっていた。
HPによると、タンネのドイツパンのヴァリエーションは、200種類を超えていたようだ。さすがはドイツパンの開拓を担っていたパン屋だけの事はある。この豊穣さは他の店を、今でも圧倒していたと思う。
以来丁度30年間、タンネはドイツパンの世界を日本に知らせる、最先端の店の位置を保ち続けて来た。
閉店の理由はHPでは詳しくは分からない。それなりの理由があるのだろう。
タンネの閉店を知って、私はブールとひまわりパンを、密かに注文した。
これで私とタンネとの付き合いも終わりになる。私はタンネの始まりと終わりに、かろうじて付き合う事が出来た事になった。
タンネからのパンが、いつ届くのかは分からない。だが、届いたら、地元のドイツパンの店のパンと味を比べながら、じっくりと噛み締めようと思う。
私とタンネとの付き合いは、驚きと感動の連続だった。その終わりを、私は私なりの華やかな封印で飾ろうと思う。ドイツパンという世界を教えてくれたタンネへの精一杯の感謝を込めて。
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