私はこの風景を石垣りんさんの詩で飾りたいと思う。
用意
それは凋落であろうか
百千の樹木がいっせいに満身の葉を振り落とすあのさかんな行為
太陽は澄んだ瞳を
身も焦がさんばかりに濯ぎ
風は枝にすがってその衣をはげと哭く
そのとき、りんごは枝もたわわにみのり
ぶどうの汁は、つぶらな実もしたたるばかりの甘さに重くなるのだ
秋
ゆたかなるこの秋
誰が何を惜しみ、何を悲しむのか
私は私の持つ一切をなげうって
大空に手をのべる
これが私の意志、これが私の願いのすべて!
空は日毎に深く、澄み、光り
私はその底ふかくつきささる一本の樹木となる
それは凋落であろうか、
いっせいに満身の葉を振り落とす
あのさかんな行為は─
私はいまこそ自分のいのちを確信する
私は身内ふかく、遠い春を抱く
そして私の表情は静かに、冬に向かってひき緊る。
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