フランスの錚々たるメンバーの文章を、日本の錚々たるメンバーが訳している。
主題はCOVID-19だ。
多くの国で、人々は疫病を蔓延させない為に、家に閉じ込められ、隔離されて過ごさねばならない状況に落とし込められた。圧倒的な無為の時間。そこで人々は思考する事に活路を見出そうとした。
本書はその思考の記録である。
疫病が蔓延する度に、人々はその疫病について思考を巡らせる。それはひとつの定めの様だ。この本には多くの思想家、哲学者、歴史家などが、COVID-19の意味するものを探り、多彩な思考実験を繰り広げている。
この本ではそれらを思想・文学・歴史・宗教・人類学という単元に分類し、それぞれに訳者の解題を付けて、纏め上げている。
COVID-19の蔓延に伴って、世界はいやが上にも変わってしまった。では、何がどの様に変えられたのか?それらを見据える事は、そう容易い事ではない。
各論者はまるで病原菌を扱うような手付きで、その問題に立ち向かっている。私たちはそれを読み、自分が置かれている立ち位置を、慎重に確かめる。
この論集は、そうした知識人と私たちの密やかな対話になっていると感じた。
エマヌエル・コッチャを始めとして、今迄知らずにいた知識人を数多く知る事が出来た。これからの読書体験に、それは生かされるだろう。
それはCOVID-19がもたらした、最大の実りなのかも知れない。
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