20211029

鳥類のデザイン

美しい本である。本書は「鳥類の総論」と「鳥類の各論」の2部構成となっており、それぞれに、見事なスケッチと生態、機能、そして進化に関するよく纏まった記載とが書かれている。


スケッチは主に、鉛筆で描かれた、単色のもので占められている。目の記載をしてあるページの扉はカラーで描かれているが、それも金泥と瑠璃色で描かれたスケッチに抑えられており、総天然色ではない。増して羽毛で飾られた鳥の絵は1枚もない。それでもこの本を読み進めている間に、何度もそれらのスケッチに見入ってしまったほど、美しいのだ。

もし、空を飛べるとしたら、どう生きるか?その答えは、鳥たちの嘴や足の形、翼の曲線に表れている。

飛ぶことは、鳥類のボディプランに厳しい制約を課している。羽ばたきの負荷に耐えうる堅牢な胴体。その可動性の小ささを補う長く柔軟な首。後肢のみで立つための姿勢。基本的なデザインは驚くほど一貫している。

しかし、その一方で、飛行能力によって驚くほど多様なライフスタイルへの可能性が開かれ、そして、それぞれの生態に応じた、1万種ものデザインが生まれた。

例えば森林での機動性を重視する者、長時間の飛翔やホバリングを得意とする者、暗視能力や聴力を磨いて夜間に行動する者など、鳥類は世界中のニッチに進出している。そして中には飛行能力を捨てた者もいる。

著者は 25年をかけて鳥の死骸を集め、骨格にし、ポーズを取らせてその機能美を見事に描き出した。

本書は、羽の下に隠された驚くべき進化の多様性を、拓跋したイラストと写実的な解説文で示している。

著者は最初の謝辞で、

この本の製作過程では、1羽の鳥も傷つけたり殺したりしていないことを述べておきたい。

と書いている。

著者がこの美しい本に対し、最も自慢したいのは、むしろそこにあるのではないかと感じさせられた。

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