16:30という中途半端な時間に最後の煙草に火を点けた。
経済的理由から先月の15日に何度目かの断煙を開始し、何度目かの悲喜劇を繰り返していた。兎に角最初の3日を越えられない。本数は減らせるが、きっちり止める事が出来ない。
業を煮やして検索したところ、歩いても行ける範囲の宮沢医院でチャンピックスを処方してくれる事が分かった。で、出して貰った。
前から気にはなっていたが、躁鬱病の薬とぶつかる(両方とも脳に直接影響を与える薬だからだ)事が心配で手を出していなかった。
しかし、今回はもう後がない。
そして、煙草に対する自分の浅ましさにほとほと嫌気が差していた。手元に煙草がないと、吸い殻を猛烈な勢いで探し始め、外までうろつき始める有様だったのだ。
30日から飲み始めたのだが、その効果はすぐに現れたと言っていい。
朝、いつも感じていた咽のいがらっぽさがなかった。だから、それ程吸いたいという気持ちにならない。
自然に煙草が減っていったのではなかった。煙草が不味くなる事はなかった。薬の効きは悪いのかも知れない。かと言って、何か満足感があるかというと全くなくなってしまい、強烈に吸いたいと思う事態にはそれ以後全く出会っていない。
チャンピックスは、飲み始めの頃は、煙草を吸いながら服用する事になっている。だから吸っていただけ。後はまだ煙草があったから(捨てるには忍びないという私の貧乏性が出た)という理由だけだった。
その煙草も終わってしまった。
20歳の春、ほんの出来心から手を出して、以来どんな貧乏な時代も煙草だけは欠かさず買っていた。その時代が終わるのだ。
喫煙器具を全て捨てた。それにしてもこんなに沢山溜め込んでいたのか!
何ひとつドラマチックでない終わり方だった。自力で断煙したのなら、それなりの悲喜劇がまたあっただろう。それもない。只、これが最後だという確信に似た気持ちだけがある。
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