20210806

リルケ「秋日」

 昨夜、蟋蟀が啼いていた。今年初めての事だ。調べてみると、毎年この時期になると啼き始めるようだ。季節がひとつ小さく動いたと感じた。

日中はまだ暑い。今日も猛暑日が予想されている。だが朝夕は格段と涼しくなり、今朝は4:04に起きたのだが、風が冷たく、肌寒くすら感じられた。

そう。私は暑さに戸惑いながらも、秋を感じたのだ。

毎年、最初に秋を感じた時に読む事にしている詩がある。それを引用しておきたい。


HERVSTTAG


Herr : es ist Zeit. Der Sommer war sehr groß.

Leg deinen Schatten auf die Sonnenuhren,

und auf den Fluren laß die Winde los.


Befiehl den letzten Früchten woll zu sesin;

gieb ihnen noch zwie südlichere Tag,

dränge sie zur Vollendung hin und jage

die letzte Süße in den schweren Wein.


Wer jetzt kein Haus hat, baut sich keines mehr.

Wer jetzt allein ist, wird es lange bleiben,

wird wachen, lesen, lange Briefe schreiben

und wird in den Alleen hin und her

unruhig wandern, wenn die Blätter treiben.



秋日


主よ、時節が参りました。夏はまことに偉大でした。

日時計のおもてにあなたの影を置いてください。

そうして平野に爽やかな風を立たせてください。


最後の果実らに、満ち満ちるようにお命じください。

彼らにもう二日だけ南国のように暖かな日をお恵みください。

果実らをすっかり実らせ、重い葡萄の房に

最後の甘味を昇らせてください。


今家を持たぬ者は、もう家を建てることはないでしょう。

今ひとりでいる者は、長くそのままでいるでしょう。

夜更けて眠らず、本を読み、長い手紙を書き。

そうして並木路を、あなたこなたと

不安気にさまようでしょう。木の葉が風に舞うときに。



この詩を実感するのは、もうひと月かふた月後の事になるのかも知れない。だが、私は明らかに昨夜と今朝、秋を予感したのだ。

話では国立あたりでは、もう蜻蛉が飛び、ツクツクボウシが啼き始めたそうだ。

この予感に、間違いはないだろう。


遙か南海洋上には、ふたつの颱風が列島を目指して進みつつある。恐らくその影響は来週いっぱい続くものと思われる。このふたつの颱風が通り過ぎた後、季節はどの様な局面を迎えているのだろうか?

時は移ろい、季節はゆっくりと進行する。盛夏は今日で終わり、晩夏と呼ぶにふさわしい気候になっているに違いない。

いつものように、アーダーベルト・シュティフターの『晩夏』を紐解く日が、ゆっくりとだが確実に近づきつつあるのを、私はかなりの確信を込めて思い描いている。


約束の日は近い。明日は立秋。

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