もしかすると世紀の大傑作が産まれる瞬間に立ち会っているのかも知れない。
これに出会ったのは2007年の時だったと記憶している。
漫画でこれ程の…と言うより、漫画だからこそ出来る表現に達しているのに度肝を抜かれた。
主な舞台が鎌倉というのも良い。個人的に非常に思い入れのある街だ。
祖母の残した大きな家に住む3姉妹。ある日、遠く山形から父親の訃報が届く。
実感の伴わない葬儀の身のやり場のなさが描かれ、「家族」を問うこの物語が始まって行く。
葬儀で3姉妹は腹違いの妹、すずと出会う。
そのすずの泣き方が凄いのだ。この号泣の描き方は漫画で無ければ不可能だったろう。漫画史に残る名場面なのでは無いかと個人的に思っている。
1巻の号泣が印象的過ぎた。2巻は若干醒めた視点で読んでしまった。けれど、読みかえしてみると、物語が丁寧に作られている事が分かる。
1巻だけで止めようと思っていた計画は崩れた。
すずを主人公にするという設定は、最初からあったのだろうか?主に彼女の視点から物語は語られ、他の3姉妹の視点がそれに絡む。
シリアスな展開でも重くならず、ストーリーと絵が相乗効果をあげて微妙な心理描写が可能になっている。
吉田秋生は他の作品でも子ども時代を子どもらしく送れなかった者が遭遇する困難さを描いているが、「カリフォルニア物語」では、それを問題提起として痛烈に描いていたのに対し、「海街Dairy」では、その問題をどのように乗り越えていくかを描こうとしている。
その姿勢があくまでも丁寧で繊細なので、読む者は救われる。
只者では無い。
4巻から5巻までの間はかなり時間が空いた。なので、この期間に1〜4巻を繰り返し読む事が出来た。そして、読む度にこの作品が繰り返し読むに耐える名作である事を確信した。
そして5巻!
今迄で最も充実した巻なのでは無いだろうか?
完結してはいない。けれどこれは採り上げなければと思わされた。
また読みかえしてみた。
名作である。
その誕生に立ち会えた事は幸運だったと思う。
…まだ完結していないけれど。
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