20130125

『目白の青く暗き春』〜キッチン樅

他人のBlogのタイトルをそのまま貰う。ここから描き始めよう。

その人の名を虚空に呼びかけたい。


瓜南直子さん。


絵描きだった。
素敵な絵を沢山残して下さった。
そして、
素敵な随筆もまた沢山残して下さった方だった。


よく読むBlogにタイトルのものがある。

目白の青く暗き春(上)
目白の青く暗き春(中)
目白の青く暗き春(下)

素晴らしい随筆になっていると思う。


私はこの随筆に全面的に共感する。

全く同じ時代を、全く同じ地域で過ごしていた。今ではひとつの奇蹟だった気がする。

同じ空気を吸って生きていたのだ。

暗きとあるが、どこにも暗さは見当たらない。けれど、そのように表現しなければならないような気になる。させられる。だから青く暗き春なのだと思う。


人生の半分以上を東京で過ごした。
だから東京には思い入れがある。
また、「あそこ」で暮らしたいとも思っている。

だが、「あそこ」の中のどこで?


私には初めての東京を経験させてくれた目白。
それも椎名町近辺しか、思いつかないのだ。


それだけ具体的に住みたい場所があるのならそこに行けば良い。
そうも思う。

そう思う時、
欠けてはならないものが欠けている事に思い当たるのだ。


そう、
椎名町にはもう
キッチン樅がないのだ。

画竜点睛を欠くと言う言葉がある。
それをキッチン樅なき東京に感じてしまうのだ。

そう、
東京にはもう
キッチン樅がないのだ。

キッチン樅が無いのなら、
東京に住まなくても良い。
そうとすら思えてくる。


10代の最後から20代。
私の青く暗き春の時代。
兎にも角にも、私は先ず飢えていた。
瓜南さん程繊細な味覚も無く、
究極とも言える赤貧の中にいた私は、
椎名町駅近くにあった洋食屋、
キッチン樅に入り浸った。

途方も無く安くて、ボリューム満点。そして何より旨い!
キッチン樅にはこの3拍子が完璧に揃っていた。

私の肉体の殆ど、
尤も頻繁に通った時代は疑いも無く肉体の細胞の全ては、
キッチン樅によって造られていた筈だ。



初期はモミライスという
ケチャップライスにとんかつの卵とじが乗せられ、
その上にブラウンソースが掛かった
洋食屋風カツ丼のようなものばかり食べていた。

今だっら、どうだろう、完食出来るだろうか?
その位のボリュームがあった。
洋食皿全面に山盛りになったカツ丼!
それを想像して頂きたい。

当時は1杯では足りていなかった。
凄まじい食欲だった。

後半になると好みも変わり、
少しは栄養の事も考え始めたのだろう、
白身魚のフライにタルタルソースが掛かったもの
+ハンバーグ
+カレーライス+スパゲッティナポリタン
というセット、
モミランチに集中した。

キッチン樅で最後に食べたのもモミランチだった。


私が食べ始めた頃はモミライスもモミランチもサービス価格で
350円ほどだったのではないだろうか?


いくら'70年代とは言え、
家賃月8000円(!)の格安下宿「富士アパート」と
キッチン樅なしでは、
私の東京暮らしは成立しなかった。



瓜南さんのBlogを読み、
久し振りに椎名町を、
そしてキッチン樅を思い出した。


誰か話題にしていないか?
「椎名町 キッチン樅」で検索してみた。

で、
驚いた。

モミランチを復元した方がいらっしゃったのだ!


伝説のキッチンモミの「モミランチ」の醍醐味を家族に味わって頂こう!


これだ!
これが「伝説」のモミランチだ!!

これにサービスのスープと味噌汁が付いた。
このスープがまた絶品だったのだ!
お新香も付いたのだが、
私は漬け物が食べられないのでいつも残していた。
それを気遣って下さったらしく、
終いにはお新香の代わりにポテトサラダを付けて下さった。

何度かそのポテトサラダの復元を試みたのだが、
マヨネーズの替わりにドレッシングを使っているらしい事は分かったが、
何を使っているのかの特定が遂に出来ず、
復元は失敗に終わっている。
ポテトサラダひとつとっても復元は難しい。
そんな絶品の店だったのだ。


良く復元されたものだと感心する。
まさにこれだ!!
余程の料理の腕の持ち主と拝見する。


驚いたのはこの画像だけでは無かった。
コメント欄を読み進めると、
キッチン樅の息子さんからの書き込みがあるではないか!


キッチン樅は復活に向かって動いている!

これはとても嬉しい出来事だった。
東京に、画竜点睛が入る!

更に!
>現在 中国山東省煙台でモミライス・ランチは復活しています。
とのことだった。



例えどの様な職業でも良い。
それが誠実なもので、良い仕事をしたものであれば、
それは必ず残るものだ。
そのことを
このクッキーパパのBlogは教えて下さった様に思える。



しかし…、
大切な人も、大切な洋食屋もない。
それが時代というものの宿命とは言え、
やはり、…
…やるせない。

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