20151110

『「対米従属」という宿痾』

随分読んだ本を溜め込んでしまった。大急ぎで感想をまとめておきたい。


ガバン・マコーマック/乗松聡子『沖縄の〈怒〉』の第5章は「鳩山の乱」と題されており、鳩山由紀夫が総理大臣として、対米従属とその既得権益に対して挑戦し、挫折した経過を追っている。本書『「対米従属」という宿痾』を、私はその章を保管する史料として読んだ。
この本は鳩山由紀夫、孫崎享、植草一秀という、合衆国に反旗を翻し、多かれ少なかれ潰しにあった3者の鼎談である。

当然「一方の側」からの陳述となる。

その一方の側というのは主に、首相の座を追われた鳩山由紀夫の立場からと言う事になるだろう。

それでも、一定の資料的価値はある。

主に普天間移設の失敗で、総理の座を追われた鳩山由紀夫だが、 その真相とはどの様なものであったのか。彼が目指していたものは何だったのかなどが本人の口から語られており、それを知る事が出来たことは価値があったと思っている。

鳩山由紀夫は植草一秀の「米、官、業、政、電」の癒着という観点を採り上げ、これらの癒着の原点は
畢竟、「日本は戦争に負けた」という事実を粉飾しようとしているところからきている
と述懐する。

そして、
戦争に負けたにも関わらず、アメリカのおかげで(より正確に言うならば戦後直後の朝鮮戦争と6、70年代のベトナム戦争による特需)、すぐに経済大国への道を歩むことが出来たために、卑屈なまでの劣等感から、アメリカへの従属心がうまれ、一方ではその反作用の形で、中国、韓国などのアジア諸国に対する優越感を生み、かこの歴史に関するこじつけや粉飾が行われた

としている。この分析は定説になっていると言っても良いだろう。

鳩山由紀夫という人物の評価は別として、この本には「巻末資料」として、幾つかの文献が収録されているが、ここにはかなり重要な記載が含まれていると感じた。重要な史料である。

それだけでもこの本は意外と重要な文献と言えるのではないだろうか。

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