『清左衛門残日録』という、NHKの時代劇だったと記憶している。舞台装置や衣装の色にまで気を配った丁寧な造りだった。その原典としてクレジットされていた事から、この作品の存在を知った。
『摘録鸚鵡籠中記・元禄武士の日記』。
題名は、籠の中の鸚鵡が、人の声を真似るように、見聞した事柄をそのままに記したものという意味が込められているらしい。
読み始めて、事件に次ぐ事件の連続に、江戸時代という時代は何と物騒な時代だったのだろうかと思ってしまった。毎月の様に、刃傷沙汰が起きている。
摘録である。
事件があった日の記録を抜き書きしてあるのだから、事件が相次いでいる様に感じるのも仕方なかろう。現代も、同じくらいの頻度で、事件は起きている。
元禄四年の記述から、巻之一と明記される。
この辺りから、この本は、俄然面白くなって来る。
著者朝日重章の、旺盛な好奇心には恐れ入る。
心動かされた事を手当たり次第記録している。
中には理に叶わない怪しげな情報もある。
元禄武士の日記と謳われているが、俎に乗せられるのは元禄時代に限らない。貞享年間から始まり、元禄、宝永、正徳、享保と、長きに渡って記録は続けられている。
公私共に、多事だった事が伺われる。
この記録の中には、当然の様に、地震、噴火、大火事などの様子が綴られている。それらの記録は、詳細を極めている。
当然一級の史料としての価値もある。
だが、旺盛な好奇心は、時として事実の裏付けを伴わない。玉石混交様々な情報が詰め込まれている。
つまり情報通である。江戸に住んでいながら、名古屋や北陸の事件についても、同じ比重で日記されている。
一体著者はどの様にして、これらの情報を得ていたのだろうかと気に掛かる。
謎だ。


