20250812

薔薇の名前

遂に読んだ。読み切ってしまった。今、強烈な読後感に圧倒されている。

ウンベルト・エーコの代名詞とも言える小説『薔薇の名前』を読破した。

今住んでいる団地に引っ越して来る前、私はこの作品を所持していた。けれどその存在感に負けて、少し読み始めては敗退するを繰り返していた。

そのうちに、この作品を読むには、年齢が高くなり過ぎてしまった様な気分に支配され、読まないまま、図書館にあるという理由で、古本屋に売ってしまった。


今回、図書館から借りての読書となったが、この様な切っ掛けがなければ、そのままずるずると読まずに過ごしていた可能性が高い。

年齢が高くなってしまった事も、これは読んでいる最中に感じたのだが、逆に功を奏したと感じた。

この作品には、読者の歴史の知識、語学力、そして何より読書量を試して来る様な気配がある。幸いな事に、私は既に『デカメロン』も『神曲』も読んでいる。ウンベルト・エーコが仕掛けたトラップに、引っ掛かる事なく、逆にそれを味わいながら身をこなして行く事が出来た。これも長い事生きて来て、様々な経験を積み、読書体験もそれなりに重ねて来た事が生きたと感じた。


内容に関しては、触れずにおく。実際に読んだ方が、楽しめるし、下手に要約すると、この作品が、単なるエンターテイメントと誤解を招く結果に導きかねない。

この作品は映画にもなっており、そのBlu-rayは所持しているが、有体に言って、原作の方が圧倒的に良い。特にラストは原作と映画は全く逆の展開を有しているが、映画の終わり方は折角の世紀の名作を台無しにしていると感じる。

敢えて言えば、映画ではグレゴリオ聖歌を実際に聴く事が出来、その点は楽しめた。

『薔薇の名前』を読破し、長い間抱え込んでいた課題を、ようやく果たせた様な、爽やかな気分にも浸っている。

これから先も、何度も私はこの『薔薇の名前』を読むだろう。

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