20260306

孤独

宮崎智之編『精選日本随筆選集 孤独』。

随筆復興だと言う。鼻息が荒い。

だが、随筆に力瘤が入っているだけあって、その審美眼は確かなものがある。このアンソロジーに含まれた随筆は、どれも高水準で読み応えがある。


選ばれた作家は、全て既知の書き手だったが、既読のものはひとつもなかった。

通読して感じたのは、良い文章には一貫した独特の香りの様なものが存在するという事だった。単調でなく、それでいて複雑すぎないリズムの様なもの。それに身を任せていると、いつの間にか、見知らぬ高みに招かれる様な文章たちなのだ。

随筆の筆者に参入する事は容易い事だ。だが、ここに示された水準に達するのは、並大抵の事ではない。永い人生の風雪に晒され、鍛え上げられた芳醇な土壌がそこにある。

一貫して流れるテーマは孤独。だがそこに寂しくうらぶれた影は存在しない。与えられた孤独を通して、己が人生を見詰め直す深い洞察力が確かに存在する。

その存在を見逃すまいとして、文章を味わいながら読んだので、予想より遥かに読了までに費やした時間は多くなった。

だが、それだけの甲斐はあったと感じている。

良い随筆に費やす時間は、風雅な時の流れだ。