20251211

賢治と鉱物

加藤禎一+青木正博『賢治と鉱物ー文系のための鉱物学入門』

美しい本だ。


それは装丁が美しいだけにとどまらず、中身の鉱物の写真に至る迄、徹底的に美しさに貫かれている。

文系のためのと謳われている。だが、鉱物の記載は本格的だ。元素記号や晶系などの用語が、何の説明もなしに使われている。

しかも、賢治が作品に用いた鉱物について、実によく調べられている。例えば、ガスタルダイトとインデコライトという項目がある。

私は地質学を専攻してきた。だがガスタルダイトなどという鉱物は、見た事も聞いたこともない。賢治の作品を読み解く上でも、この鉱物の正体は、長い間謎であったらしい。

それが写真付きで紹介されている。

これは宮沢賢治の作品を鑑賞する際にも、実に有難い手助けをしてくれる本なのではないだろうか?

鉱物の色をキーとして、青、緑、黄色、赤、白、黒の6章に分けられて記載されている。

賢治は空の色などを鉱物を喩えとして、作品中で描写している事が多い。

この分け方は理に適っている。

図書館で借りた。けれど読んでいるうちに、どうしても欲しくなった。この本に引用されている賢治の作品を、読み解きたくなったのだ。

その意味ではこの本は、理系のための賢治入門とも言えるのではないだろうか?

無論、この美しい本を、写真もろとも手元に置いておきたい欲求もある。

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