20250909

少女たちの戦争

優れた文集である。

この本は、1941年12月8日の太平洋戦争開戦時に、満20歳未満だった女性たちによるエッセイを、著者の生年順に収録したものだ。その数は総勢27名に上る。


そのうち最年長は1922年5月生まれの瀬戸内寂聴さんで当時19歳。最年少は1938年6月生まれの佐野洋子さん当時3歳。

1931年9月に満州事変があり、1937年7月には日中戦争が始まり、1945年8月15日迄15年戦争が続いた。

彼女たちが物心ついた時にはすでに日本は戦時下だった訳だ。

非日常が日常となった日々の中で、幼少期・青春期を送った彼女たちは何を思い、どう過ごしたのか。それが時に戦争をはみ出す記載の中に、生き生きと綴られている。

それらを読み進めてゆくうちに、私はいつの間にか彼女らの語りに、すっかり気を取られてしまった。

それは、事実が持つ重さでもあっただろう。

今年、戦後80年を迎えた。

戦争を体験した人の数は、どんどん少なくなって行く。そんな中で、上梓されたこの文集は、その戦争の、貴重な記録でもあると思う。

中央公論新社は良い仕事をした。

0 件のコメント: