言わずと知れた近松門左衛門の人形浄瑠璃『冥土飛脚』の翻案。飛脚忠兵衛を、緒方洪庵の門下生として、遊女梅川を武家の育ちとして設定を変え、現代に蘇らせている。
あ・うん♡ぐるーぷによる第8回公演。脚本・演出はさとうしょう。場所は銀座8丁目、新橋の博品館劇場。
間宮家の養子である忠兵衛は、日本医学の祖とも呼ばれる緒方洪庵から絶対的な信頼を得る若き医者であった。学問にしか興味が無かった堅物の忠兵衛が、運命の相手梅川と出会ったのは新町の遊郭であった。二人は出逢った瞬間から、互いに強く惹かれあい、恋に落ちた。
しかし育ちは武家の娘ながら、金が物を言う苦界の遊女に成り果てた梅川と、出世を約束された忠兵衛。二人の前に立ちはだかる障害の壁は途方もなく高かった。
周囲の反対に追い詰められた梅川と忠兵衛は、梅川を身請けする為に、幕府の公金に手を付け、追われる身となり、やがて雪の降り頻る中、二人だけの世界を求めて心中に旅立つ。
横内正、原田大二郎をはじめとするベテランの俳優陣と若手がうまく噛み合った演技は、観ていて安心出来た。
しかし3時間半に及ぶ長丁場はやや苦痛だった。もう少し刈り込めたと思う。だが、近松門左衛門が原作となれば、そうも行かなかったのだろうか?
また場の展開が全て溶暗だけと言うのは頂けない。その場に流れる音楽も8割は同じ曲。少し飽きた。
心中シーンを先駆ける雪の精の乱舞は見事な演出だった。
やりたい事がはっきりしている芝居は、観ていて心地よい。
忠兵衛の養母、間宮妙役の演技が、出番は少なかったが、台詞回し、舞台への立ち方共に安定しており、巧かった。妙に印象に残った。