パロディーTシャツと呼ばれているのだそうだ。
もし、当時この言葉を知っていたら、或いは店のどこかにこの言葉が書いてあったら、私は確実に、そのTシャツを買っていただろう。
御徒町のアメ横の、怪しげな洋品店の店先に、それは展示されていた。
adidasのロゴそっくりに、魚が並べられている。そしてadidasの文字そっくりのフォントでajidesと書いてあった。鯵です。
見かけて思わず吹き出した。よく考えられている。
だが、そのTシャツと店の醸し出す怪しげな雰囲気に呑まれて、何だこのバッタもんは。と見切り、私はそのTシャツを買わなかった。
下宿に帰って来て、私は私の判断を、ひどく悔しがった。
買っておくべきだった!
この程、あのTシャツは幻ではなかったか?と、Webで検索してみた。すぐに見付かった。やはり実在したのだ。
何でもイチロー選手が着ていて、人気が出たらしい。彼は私のように貧乏ではない。買ったのだ。
今ならいつでもこのパロディーTシャツを入手出来る。
だが、そう思うと、私を悔しがらせた緊迫感が無くなってしまった。
いつでも手に入るなら、今でなくても良い。
それにイチロー選手の真似をしたと思われるのも、何だか癪だ。
私はajidesTシャツを買わないだろう。
ただ、その存在を認知して貰えたらそれで良い。
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SNSにこの投稿を投げたら、よしさんという方から、ロゴが燃えているkajidesを買ったという指摘を受けた。
早速調べたところ、ajidesの頭にkを付けたkajides(火事です)というTシャツは実在する事がわかった。
いやはや、このパロディーTシャツ。どこ迄進化するのだろうか?