数週間前から、ベランダから黄色い花の群落が見えていた。
それが何であるか確かめようと思いつつ、さほど忙しくもないのに今日を迎えてしまった。
次第に花の数は少なくなって行く。これ以上遅くなると、花の形態など細かい事が観察出来そうにない。
昼ご飯を造って食べ、階段を下りた。
その花はウマノアシガタだった。
これをキンポウゲ(金鳳花)と呼ぶ人もいるが(実はわたしもそうだった)、正確には間違いらしい。キンポウゲとはキンポウゲ科の植物の総称、或いは、八重咲きのウマノアシガタを呼ぶ名前らしい。どちらかははっきりしていない。
ここ迄はWebで検索すると簡単に確認出来た。
だが、意外な事が知られていない事も知り、驚いた。
ウマノアシガタという名前の由来は、その葉、特に根生葉の形にあるのだが、ざっと調べてみた結果、由来が正確に伝わっていないようだ。
wikipediaのウマノアシガタ項目には
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和名の由来は根生葉を馬の蹄に見立てたものと言われるが、葉の形は実際には似ていないというのが、衆目の一致するところである。個々の葉ではなくロゼットの形状を指すという見解や、「鳥の足形」が誤って「馬の足形」と伝わってしまった、という説がある。
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とある。
わたしは衆目には一致しない。
他にもいろいろなサイトを当たってみたが
「正直なところ、そのようには見えません」
「いろいろ見てもあまり想像できません」
などの記載ばかりだった。
何故、ウマノアシガタの名前の由来が知られなくなったのだろう?
馬の脚をあまり良く見た事が無いのか、あっても気が付かなかったのか?
ウマノアシガタと聞いて、やはり簡単に連想出来るのは馬蹄形の馬の足跡だろう。
だが、これにこだわっているとウマノアシガタは見えて来ない。
あれは単なる蹄鉄の跡であって「馬の足形」ではない。
最近馬そのものを見なくなった。
従って馬の足跡も見ない。
例え見たとしても、それは馬の足跡ではなく、蹄鉄の跡。
これでは幾ら想像しても名前の由来に気の付きようが無い。
更に、馬の脚の裏を見た事がある人でも、蹄に囲まれた境界に注目する人は殆どいないだろう。
ウマノアシガタの名の由来は殆ど謎のゾーンに突入してしまっている
蹄鉄を打ち込む馬の蹄に囲まれた部分に注目すると簡単に納得出来るのだ。
確かに蹄の外側は馬蹄形をしているが、それに囲まれた肉質部との境界は複雑に入り組んでいて、切れ込みのある植物の葉に似ている。
心理学で使われる図で、黒い部分に注目すると人がふたり向き合った様に見えるが、その時白い部分は単なる地だ。しかし、一旦白い部分に注目してみると、それがグラスの形に見えて来る。そんな図があるが、それと同じ事かも知れない。
言わば図と地の部分を逆転して見ると言う事なのだろうが、その名前の付け方の妙に感動した記憶がある。
子供の頃、知り合いの家に行き、馬の蹄鉄を付ける手伝いをした事があった。その時、いやと言う程馬の足の裏を見た。
子供と言うものは妙なものに興味を持つもので、わたしは今よりずっと動植物の名前を知っていた。勿論ウマノアシガタも知っていて、それが蹄ではなく、蹄に囲まれた部分の形に似ている事にも気が付く事が出来た。殆どそっくりなのだ。
これだけ似ているものに対して、
「葉の形は実際には似ていないというのが、衆目の一致するところである」はなかろう。
花の名の、由来の洒落っ気が既に伝わっていない事を知って、わたしは少なからず淋しい気持ちがした。
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