半日か、かかっても1日あれば読み終える事ができるだろう。最初、そう鷹を括っていた。ところが読み始めてみると、単にイタリア全土の食を紹介しているだけではなく、イタリアの歴史・地理・文化にも深く触れられており、採り上げられている情報量が半端ではなかった。
結局、読み終える迄2日半掛かった。
日本とイタリアの相似点、相違点が最初に述べられている。
どちらも細長い国だ。
だが日本は自国の郷土料理を大切にせず、食の均一化に直走ったが、イタリアは様々な制度・工夫を凝らして、郷土料理を大切にする道を選んだ。
その点を考慮すれば、食に纏わる歴史、地理、文化に大きく足を踏み込んでいる理由も理解出来る。
本書の構成はイタリアを、北イタリア・中央イタリア・南イタリア・島々に取り敢えず分け、それぞれの郷土料理の特徴を記載してゆく形を採っている。
その上で、郷土料理の伝統と文化を、グローバリゼーションに対抗しつつ、育ててゆく様々な工夫を紹介している。
そうした制度・工夫を知ると、日本がグローバリゼーションに対して、いかに無抵抗だったかが分かる。
どこに行っても、大体同じような味、同じような色の食材が出てくる。それにコンビニの流星、ネット販売の普及が追い風を吹かせる。
筆者は、イタリアの方針に賛意を示しているのだろう。読んでいて、イタリアの郷土料理の多様性に、私も羨ましさを感じざるを得なかった。
使われているオリーブオイルひとつ採っても、地域によって、千差万別なのだ。ましてやパスタの多様性は実に豊かで、500種類を超えていると言う。
翻って、今迄イタリア料理と一括して理解していた料理は一体何だったのだろうか?と言う事になる。
受験で、一応イタリアの歴史・地理は理解していた心算でいた。
だが本書を読んで、食を超えて、私が持っていたイタリア理解の底の浅さは計り知れないなという気分になった。
イタリアを知るという意味でも、本書は優れている。イタリアの食・歴史・地理・文化には、やたらと詳しくなった。