20221107

鴨脚樹の変遷3

 私はこの風景を石垣りんさんの詩で飾りたいと思う。


用意

 

それは凋落であろうか


百千の樹木がいっせいに満身の葉を振り落とすあのさかんな行為


太陽は澄んだ瞳を

身も焦がさんばかりに濯ぎ

風は枝にすがってその衣をはげと哭く


そのとき、りんごは枝もたわわにみのり

ぶどうの汁は、つぶらな実もしたたるばかりの甘さに重くなるのだ


ゆたかなるこの秋

誰が何を惜しみ、何を悲しむのか

私は私の持つ一切をなげうって

大空に手をのべる

これが私の意志、これが私の願いのすべて!


空は日毎に深く、澄み、光り

私はその底ふかくつきささる一本の樹木となる


それは凋落であろうか、


いっせいに満身の葉を振り落とす

あのさかんな行為は─


私はいまこそ自分のいのちを確信する

私は身内ふかく、遠い春を抱く

そして私の表情は静かに、冬に向かってひき緊る。

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