20220102

新・映像の世紀

昨年末にNHKプラスで『新・映像の世紀』を一気見した。

2016年に放送されたものの再編集版だ。NHKはよほどこの番組に自信があるのだろう。BSでも90分の再編集版を放送しているし、今回また地上波のNHKスペシャルで再放送された。

動画による記録が始まってから100年が経つ。映像は、その100年間を記録して来た。この100年とは、どのような100年だったのか?それを記録されて来た映像を振り返る事で検証しようというのが、この番組の骨子になっている。


最初に登場するのは第一次世界大戦だ。

この戦争は従来の戦争とは、全く別の戦争となった。科学が戦争に動員され、人間の尊厳を根こそぎ葬り去る破壊力を持った戦争だった。

そして、第一次世界大戦は、映像に記録された、最初の戦争でもあった。

映像は、その発端から展開、終結に至るまでを、丹念に振り返っている。

誰もが、ほんの数ヶ月で戦争は終わると思っていた。だが、複雑に入り組んだ同盟関係や新兵器の登場が、戦争を途方もなく長い、悲惨なものに変えた。

まさに100年の悲劇はここから始まったのだ。

ここから現在に至る迄の世界の実像を、映像は着実に記録して来た。

初めて見る映像が多かった。

初めて知る事も多かった。

「そうだったのか!」と何度も独り言を繰り返した。

編集された映像は、そのまま現代史となっていた。

NHKは毀誉褒貶が激しいテレビ局だ。だが、この番組を見る限り、NHKには良い番組を作る力は確実に残っていると判断して良いのではないかと思った。

この1世紀に何が起きたのか?何故起きたのか?を、映像は説得力を持って、記録して来たのだ。それは今迄信じて来た虚像を、根底から覆すものでもあった。

だが、ふと思う。その虚像もまた、映像によって作り上げられて来たものではなかったか?

映像は諸刃の剣なのだと思う。真実も映し出すが、虚構もまた成立させてしまう。

私たちは過剰な迄に溢れる情報に対するリテラシーを、しっかりと持ってゆかねばならないのだろう。そうでなければ、その情報を操る者に、一方的に踊らされるだけだ。

番組は最後に、現在という時代が、誰もが被写体であり、誰もが制作者であるような、新しい映像の世紀に入った事を宣言して終わっている。

誰もが、その諸刃の剣を手にしている時代なのだ。

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