20240923

月曜か火曜

ヴァージニア・ウルフ本人の手によって選ばれた、唯一の短編小説集の復刻である。


本書に含まれた8つの短編には、いずれも邦訳があるが、8篇全てを一冊にまとめて収録した邦訳はこれまで出ていない。

更に本書は8篇を元の順番に並べ、初版で使われていたウルフの姉ヴァネッサ・ベルによる4枚の木版を、元の位置に相当するところに挿み、同じくベルによる表紙を扉絵にしている。

初版と異なっているのは、日本語に翻訳されているという事と、読みやすさを考慮して、「ある協会」と「書かれなかった小説」に改行を増やした点のみである。他の短編には新たな改行も加えられていない。

本書を一読して気付くのは、それぞれの短編が、現代にも通用するレベルで、高度に実験的な手法で書かれているという事だ。

そしてそれぞれの短編で、それぞれの新しい試みが施されている。

初版は、売れなかったらしい。恐らく、時代がヴァージニア・ウルフに追い付いていなかったのだろう。

今でこそ、ヴァージニア・ウルフは永遠のフェミニストとされているが、当時は、その面でも十分に評価されていたとは言い難い。

本書で、もうひとつ驚いたのは、訳者による、丁寧な解説が加えられている事だ。これは驚くべき充実ぶりを示す文章であり、これだけでも一冊の本として成立するだけの内容とヴォリュームを持っている。

ヴァージニア・ウルフをまだ読んでいない方にとっての、入門書としてのみならず、既にかなりの冊数をこなしている方にとっての発展の場としても、貴重な一冊となる事は間違い無いだろう。

ヴァージニア・ウルフが気になっている、全ての方にこの本をお勧めしたい。

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