20210201

とべたら本こ

21世紀になって、この曲を聴く事が出来るとは、夢にも思っていなかった。

録音状態は、決して良いとは言えない。なにしろもう49年も前の曲だ。だが当時のままのヴァージョンで聴けるのだ。これ程嬉しい事はない。

忘れもしない。’72年の5月6日から27日の毎週土曜日、夕方6時5分から35分にNHK少年ドラマシリーズとして、全4回、『とべたら本こ』が放映された。この曲はその主題歌として、前半2回に(1)が、後半2回に(2)が流されたものだ。

つまり曲が流れたのは、各2回ずつ。これでは録音した者がいなかっただろうと考えるのが当然で、殆ど諦めていた。

だが、♪お試しお試しとべたら本こ♪という部分のメロディーが忘れられず、ひとりで何度も脳内再生を繰り返していた。

今回、何も期待せず、検索した結果、何と!2曲ともYouTubeに上がっているのを発見し、とても驚いた。

    

検索して知ったのは、この曲を創り、歌っているのは金延幸子というシンガーソングライターだという事。独特のコード感覚を持った、魅力的な歌い手だ。

原作は映画『転校生』の原作となった『おれがあいつであいつがおれで』で知られた児童文学者山中恒。

「とべたら本こ」とは、縄跳び遊びの決まり文句で、「うまく跳べたら、今度は本番」の意味。これが本編ではパラフレーズし、夢のあるエピソードに膨らんで行く。

しかし、物語は決して甘いものではなく、子どもの目から見た、大人の欺瞞や醜さを、過激なまでに描いている。これは戦争後、もう2度と大人には騙されまいと思ったと言う、山中の思いを如実に反映したものだろう。実の両親をこれ程批判的に扱った児童文学は、従来なかったのではなかろうか?

 1960年に山中は、『赤毛のポチ』『とべたら本こ』『サムライの子』と、矢継ぎ早に3冊の長編を発表したが、理論社の小宮山量平が『赤毛のポチ』の出版を確約した時、「枚数の関係で他にもう1編」と言われて渡したのが『とべたら本こ』だったと言う。

主人公は山川カズオ役有馬義人さん。他にカズオの父・政一役矢野宣さん。カズオの母・せつ子役富士真奈美さん。気分次第で時に優しく(と言うより溺愛し)時におっかなく、暴力まで振るう母親役を富士真奈美さんが熱演していたのを、はっきりと覚えている。

原作の良さを生かした、極めて面白いドラマだった。 

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